中国人観光客の来道を持続するための私の提言

北海道華僑華人連合会副会長,札幌大学教授 汪 志平


10月1日以降,中国は「国慶節」という連休に入り,予想通りに大勢の観光客が日本,そして北海道に押し寄せてきています。札幌駅周辺の電気量販店,大通 当たりの百貨店,狸小路の特産土産店など,いずれも中国語が飛び混じり,活気を溢れています。国慶節の連休はすぐ終わりますが,これからは如何に北海道・ 日本の魅力を維持いていくかについて,考えさせる機会が与えられました。
10月3日,TBS系列局の北海道放送(HBC)が私の研究室で,約半時間ほどインタビューしました。それが10月5日夕方の番組「今日ドキ」 (KYO-DOKI)で放送されました。テレビではほんの数十秒の音声しかでなかったが,当日私が話した内容を,メモ程度に整理しておき,関心のある皆様 と共有したいです。
★中国人観光客の「爆買い」はこれから最低数年間も続くでしょう。確かに上海や北京のような沿海先進地域からの富裕層観光客には,リピーターが 次第に多くなってきており,彼らはすでに日本製品をほぼ揃えているため,もう「爆買い」はしないと思います。しかし,内陸地域からの観光客,あるいは沿海 部の中下階層の方々は,ほとんど初めての日本訪問なので,自分使用,そして親戚や友人に頼まれた買うものリストは相当長いでしょう。つまり,沿岸地域から 内陸地域へ,そして富裕層からより下の階層へと,来日観光客の範囲が広がっていきます。
★中国株式市場バブルの崩壊の影響は限定的なものでしょう。今年の6月から,中国の株価は4割近く下がってきましたので,多くの資産を株式に注 ぎ込んだ個人投資家は大きな損失を被ったのは想像できますが,一般の市民,とりわけ内陸の市民はそれほど深くかかわっていないと推測します。したがって, 株式バブルの影響は日本のメディアが喧伝したほど大きくないし,観光客の購買行動への影響は限られていると考えます。
★中国からの北海道観光リピーターにとって,商品の爆買いは主要な目的ではなくなり,体験型・滞在型の観光内容を開発して提供しなければ,長続 きはしません。彼らにとって,大きな観光バスに数十人が乗り込んで,決められた観光ルートを回って見ることは魅力がなくなり,少人数の親しい友人や家族で 構成されるグループが,大勢の中国人観光客の行かない穴場を楽しむことを求めていくでしょう。自然の景色を見て写真を撮るだけでは満足しなくなり,自分で 日本人の生活や生産の活動に参加し体験したいでしょう。
★中国人観光客とのトラブルを避けるために,誤解を減らす工夫が必要でしょう。特に初めて海外旅行に参加する中国人にとって,日本人にとっては 常識で当たり前の事柄でも,全く知らないことが多いと思います。日本の中国大使館・領事館が観光ビザを発行する際に,日本の旅の心得のようなパンフレット を一緒に配布した方がいいでしょう。また,団体ツアーの場合,ガイドさんなどには,バス乗車中や空港での待ち合わせ時間などを利用して,日本の生活常識を 解説してもらうことを義務付ける必要があります。さらに,中国人観光客のよく利用する商店では,できるだけ中国語の分かる店員を配置してもらいたいです が,それが難しければ,少なくとも店頭には日・中・英の三カ国語で,通常想像できる場面に使う説明カードを用意した方がよいでしょう。例えば,「会計の前 に商品を開封しないでください」(付款以前请不要打开预购商品)。
★中国人観光客の異質を排除せず,多様性のある考え方を受け入れるべきです。多くの中国人観光客の行動特質に対して,日本の市民が違和感を持っ ているでしょう。大きな声でしゃべり,街路でのタバコ吸い,行列に割り込みなどは,日本のメディアに時々取り上げられています。これらの行為には,中国で も喜ばしくないこともあれば,まま我慢できる行為もあります。日本の市民も中国のことをもっと理解し,中国人も来日前にもっと日本のことを勉強しなければ なりません。
よく報道されるように,中国人観光客の買い物代金は国別で他の国を大きく引き離して,断然トップなので,日本の小売業にとって大事な客でしょう。 異質を理解した上での利用が日本社会・日本企業に必要ではないでしょうか。お互いに視野が広がれば,日中両国の友好関係の構築に大いに役立つはずです。私 も微力ながら貢献したいです。

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