上海を発ったアジア最大のクルーズ船「クァンタム・オブ・ザ・シーズ」が6月、室蘭港に接岸した。

乗客約4400人の多くが半日の滞在のため大型バスで向かったのが60キロ北の洞爺湖だ。湖の背後に有珠山と昭和新山を望む絶景の展望台は客が途絶えることがなかった。お土産は飛ぶように売れ、女性用トイレは20~30分待ちだった。

洞爺湖温泉の昨年度の宿泊客数68万4千人のうち、外国人客は4割を占め、中国人客は前年度より6割多い7万8千人が訪れた。

湖畔では100億円を投じるという高級リゾートの計画が進んでいる。仕掛けるのは中国で不動産投資業などを展開する「永同昌集団」。取得済みの7万7千平方メートルの土地に数百室規模の宿泊施設を建て、2019年の開業を目指す。

札幌の現地法人社長を務める富長林氏(52)は01年に来日するまで北京で公務員だった。同じ公務員で北大に留学した妻が北海道を気に入り、永住を決意。以来、札幌を拠点に飲食・貿易業も展開する。

洞爺湖町によると、開発予定地は国立公園特別地域で、開発行為は法律で制限されている。建設には環境省などの許認可も必要だが、富氏は「日本暮らしで学んだ最も大切なことは信頼を得ること。長くお付き合いするため、一つ一つ丁寧に進めます」と強調する。

富氏のオフィスには大きなパノラマ写真が飾ってある。中央に習近平国家主席を囲む数百人の輪に富氏も納まる。世界で活躍する華僑が今年、北京に集った際の記念写真で、道華僑華人連合会の会長として出席した。

説明の最後をこう締めくくった。「私たち中国人は仲間で支え合って世界に進出してきた。大きな可能性を秘めた北海道は今、その道半ばです」。(長谷川潤)